日本ケアラー連盟は、ケアラーは全世代で多様であり、子ども期から青年期、社会人としての大人に至るまで、切れ目のない、包括的な“ケアラーの人生への支援”が必要であると捉えています。ただ、実際に支援をしていくにあたっては、それぞれの時期に固有な支援ニーズがあることにも留意していかなくてはいけない状況があります。
「ヤングケアラー」については、これまで、「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子ども」とし、「若者ケアラー」に関しては、「18歳~おおむね30歳代までのケアラーを想定」と示してきました。
「若者ケアラー」の年齢幅をこのようにとったのは、日本ケアラー連盟がこの定義を打ち出した当時、内閣府が「子ども・若者ビジョン(平成22年7月23日子ども・若者育成支援推進本部決定)」において、乳幼児期からポスト青年期までを広く支援対象とするということを明示するために「青少年」に代えて「子ども・若者」という言葉を使用することとし「ポスト青年期」を「40歳未満」としたこと、「子ども・若者ビジョン」を受けて厚生労働省が創設した「地域若者サポートステーション」での対象年齢が15歳以上39歳以下となっていたこと、そして、日本ケアラー連盟に当時関わって下さっていた20代・30代のケアラーの方々は人数の多い50代以上のケアラーとはまた違った問題に直面していて、一般の「ケアラー」と区別する言葉を必要としていたことが、その背景にあります。
ただ、「ヤングケアラー」や「若者ケアラー」に関する社会の認知が進み、支援策をどのようにつくっていくかが具体的に議論されるようになってきた今日、「18歳~おおむね30歳代」という括りも大雑把すぎると感じられるようになってきました。イギリスでは「ヤングアダルトケアラー(young adult carer)」という言葉が18歳以上~25歳ぐらいまでの「青年」を指して使われています(※)。この年代は、主に「大人への移行期(transition )」にあたり、法的にも「成人」と位置付けられるなかで、学校を卒業した後どうするか、親の家を出るのかどうか、といった進路に関わる相談や情報提供、決断のサポートや後押し、職業訓練や高等教育の機会から排除されない環境の整備などが、重要な支援課題と考えられています。それに対して、「ポスト青年期」にあたる20代後半から30代にかけては、学校を出てから数年が経ち、収入を伴う仕事とケアの関係、親しい人との関係をどのようにつくっていくのか、結婚するのか、子どもを持つのか、というように、自らの仕事や家族形成を意識しながら、時には同年代との比較の中で「自分は取り残されている」という焦りも持ちながら、ケアラーである自分を考える人が多いようです。
実際には、ヤングケアラーが18歳を過ぎ、20代半ばも過ぎていくことは珍しくありませんが、法的に「子ども」と位置付けられる時期、学校を出てすぐの時期、「社会人」としての役割を負うことを意識される時期とでは、個人の思いや支援の仕方が違ってくることも事実です。そのことをふまえ、日本ケアラー連盟では、「若者ケアラー」という言葉が対象とする年齢層のうち、18歳以上~25歳頃については「ヤングアダルトケアラー(young adult carer)」という名称を用いていきたいと思います。
「ヤングアダルトケアラー」に対しても、20代後半から30代の若者ケアラーに対しても、社会の皆様の理解とサポートが必要であることは変わりません。より現実に即した支援を構築していくためにも、あえて「ヤングアダルトケアラー」という言葉を打ち出していくことを、ご了解いただければと思います。
※ Fiona Becker and Saul Becker, 2008, Young Adult Carers in the UK: Experiences, Needs and Services for Carers aged 16-24, The Princess Royal Trust for Carers では、ヤングアダルトケアラーの年齢の上限は 24 歳となっていま すが、イギリスでヤングケアラー支援を行っている団体ケアラーズ・トラストのウェブペ ージでのヤングアダルトケアラーの説明(https://carers.org/aboutcaring/about-young-adult-carers)など、いくつかの文献では 25 歳とされており、今回は 25 歳を目安として提示することにしました。
2023.2.26
2023.3.17 修正
2023.6.12 修正
一般社団法人日本ケアラー連盟
ヤングケアラープロジェクト